先週の火曜日から一週間、上海に行ってきた。
上海の物件を手掛けるのは2件目。
今回の出張の目的は施工監理と、この物件のコンセプトの一つである、店内に『絵を描く』こと。手描きのグラフィックを店内にちりばめることを提案し、それを実施しに行ったわけだ。
グラフィックは、予め仕上げられた内装をベースに、その内装の形状を意識し即興的な要素を持たせながら描いてもらうことが肝だった。そうすることで、グラフィックが内装のデザインに溶け込み、一部分となり、結果的にお店の特徴の一つとなるようなことを考えていたからだ。単体で完結された絵があるというよりは、内装がありきでその絵がある…そういう雰囲気を出したかった。
今回グラフィックを依頼したのは、事務所をシェアしているSAND 山本直樹くん。彼は、同じく事務所をシェアしている森田くんとSAY HELLOというアパレルブランドも手掛けている。
僕だけ、チェックを兼ねて3日前から現場入りした。もちろん僕が着いた時点で、ある程度の内装は出来上がっていないといけない。
什器は思ったよりも仕上りがよく、少しだけ安心しながら現場に行くと…出来上がるっているはずの内装は建てられた壁に塗装がされているくらいの状態。
呆れて言葉も出ない。
中国の会社にはスケジュール感覚とか、約束を守らなければならないとかいう感覚が薄い。
ただ、この国で『なんで!?』とか聞いても時間の無駄だということはわかっていたので、『本当に3日後から作業できるの!?』とだけ訪ねる。
『大丈夫…やるだけやります。』といういつも通りの答えに、考えても仕方がない…という結論に至るしかなかった。
グラフィックチームが来る前日になっても現場は一向に急ぐ気配がない。おかげで自由時間が出来て、ずいぶんと上海には詳しくなった。
ただ、最悪の状況も考慮しなければならないので、今回で描き終えることが出来なかった場合また描きに来なければならないので追加で作業費がかかってきてしまうよ…というクライアントへの忠告に対して、『今回掛けるところまで描いてくれればいい。クライアントがそういっているんだからいいだろう!?』という信じがたい回答。
ヘルツオークのオリンピックスタジアム『国家体育場』も、設計当初のスライド式天井が政府からの突然の大幅な減額要請によっていきなりなしにされたらしいが、
こんな調子だったんだと思う。
クライアント側の、お店に対する最終的なクオリティのプライオリティは低い。
そしてとうとう作業開始予定日、昼過ぎにメンバーが合流してから現場に行ってもやっぱりあまり進んでいない。この日も約束はやっぱり守られず、結局予想通り、作業は始められなかった。とびきり辛い四川料理をお腹いっぱい食べて気を紛らわす。
次の日も什器が納められていない部分があったり、その日の明朝に塗った床のウレタン塗料の匂いで作業どころではない。
明らかな突貫工事によって、まあまあだった什器はキズだらけ、壁はボロボロ。とうとう作業は3日目からとなる。
クリーニングも終えて洋服を並べる前のほぼ完成された状態。これが僕の出したグラフィック実施への条件だった。明日から作業を始められなければ、今回の出張はまるで無駄。こうなっては気持ちを切り返るしかない。マッサージ屋さんに行ってゴリゴリの施術を受け気を紛らわす。
3日目、これが中国のマンパワーなのか、まぁまぁ出来上がっていた。
引いてみるときれいだが、近くで見るととても残念な状態の現場で、朝9時から作業開始。
描くしかない。
描いて描いて描いて15時間、夜中の24時まで一心不乱に描き続けてくれた直樹のがんばりと、以心伝心のメンバーのチームワークで最低限の絵は仕上げることが出来た。
最終日、幾つかのグラフィックを空港に向かわなければならない昼過ぎまでに仕上げ、足早に空港へ。この日はマスクを着けながらの作業だった。
でも、最終的に店内にちりばめられたグラフティはまそこそこ満足のいくものとなった。
通訳のおじさんが『若松さん、今回はみんなを助けたね〜』の言葉に、腑に落ちない気持ちでいっぱいのまま、?だからけの上海ツアーが幕を閉じる。
気心の知れた仲間と海外で仕事ができ、激動の上海をリアルに体験できたことだけでも良かったと思おう。
この後のブログでも、この国の?を取り上げようと思います。